ピックの定理って知っていますか?…とんでもない定理です。
説明よりも何よりも,まず次の問題を解いてみてください。
問題1 (1993慶應義塾中等部)
図のような1目もり1pの方眼紙にかいた三角形ABCの面積は何p2ですか。 |
求め方はいろいろありますが,正方形全体からよけいな三角形をひいていくのが,ごくふつうの解き方でしょう。
正方形全体=6×6=36
ア=5×6÷2=15
イ=6×2÷2=6
ウ=1×4÷2=2
三角形ABC
=正方形全体−(ア+イ+ウ)
=36−(15+6+2)
=13
ところが,ピックの定理を利用すると,まったく違う解き方で求められるのです。
まわりの点の数と,内部の点の数を数えるだけで面積が求められるという,ウソのような定理です。
ただし,次のような条件が必要です。
・1目もりは1pでなければならない。
・頂点は必ず目もりのところになければならない。
・図形は直線が囲まれていなければならない。
実際に,ピックの定理を使って面積を求めてみましょう。
右の図で,まわりの点の数は4個です。
右の図で,内部の点の数は12個です。
すると,ピックの定理により,
三角形ABCの面積
=まわりの点の数÷2+内部の点の数−1
=4÷2+12−1
=13
みごと,ふつうの解き方と同じ答えになりました。
次の問題はどうでしょう。
問題2 (2006日大第一)
右の正方形に描かれた斜線部分の面積を求めなさい。 |
ピックの定理を使って,求めてみましょう。
右の図で,まわりの点の数は7個です。
右の図で,内部の点の数は13個です。
すると,ピックの定理により,
斜線部分の面積
=まわりの点の数÷2+内部の点の数−1
=7÷2+13−1
=15.5
次の問題も,ピックの定理を使って求めてください。
問題3 (2002東京女子学園)
面積が72cm2の正方形の各辺を四等分して図のように点線をひきました。また,辺上の点や点線の交点を結んで図のような斜線の図形をつくりました。 斜線の図形の面積は何cm2ですか。 |
今までの問題は,ピックの定理を無理矢理使ったようなイメージがありました。
しかし次の問題は,ピックの定理を使った方が,解きやすくなる問題です。
問題4 (2004青山学院中)
右の図のように方眼紙に図形の一部がかいてあります。 方眼紙の中の1つの点を選び,ア,イの点とそれぞれ直線で結んで,面積が11cm2となる図形を作りなさい。 ただし,方眼の1ますは1cm2の正方形です。 |
すでに,まわりには7個の点があります。
もう1個の点を選ぶと,8個の点になります。
ピックの定理を利用すると,
8÷2+内部の点の数−1=11
となります。
内部の点の数は,11+1−8÷2=8(個)となりますから,
内部に点が8個あるようにすればよいわけです。
右の図のようにすれば,内部に8個の点があることになりますから,
右の図のように,1つの点を選べばよいことになります。
これで,できあがりです。
次の問題も,ピックの定理を使って求めることができます。
問題5 (2006女子学院中)
右の図のように,面積が1cm2の正三角形をすき間なくしきつめた。 3つの点A,B,Cを結んでできる三角形の面積は何cm2ですか。 |
1つのマス(正方形)の面積が1cm2なら,ピックの定理をそのまま利用できますが,
この問題は,1つの正三角形の面積が1cm2なのです。
しかし,△と▽を合わせてできる平行四辺形を1マスと考えると,1マスの面積は2cm2となり,
ピックの定理で求めた答えのちょうど2倍が正解となります。
ピックの定理を利用すると,
5÷2+12−1=13.5(マス)の面積となり,
1マスは2(cm2)ですから,
2×13.5=27(cm2)
となります。
ピックの定理の証明を考えてみました。
ピックの定理は,このように楽しい定理なのですが,証明はとてもむずかしいです。
証明を読んで意味がわからなくても,気にしないようにしてください。