目次
1.パップス・ギュルダンの定理
2.トーラスの体積・表面積
3.球の表面積
4.球の体積
1.パップス・ギュルダンの定理
パップス・ギュルダンの定理って知っていますか?…かなりベンリですよ。
説明よりも何よりも,まず次の問題を解いてみてください。
問題1 (2006駒場東邦)
右の図のような2つの長方形で作られる斜線部分を直線アを軸としてそのまわりに1回転してできる立体の体積は何cm3ですか。 ただし,円周率は3.14とします。
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回転してできる立体は,右の図のようになっています。
半径6cm,高さ8cmの円柱全体から,半径4cm,高さ4cmの円柱を引き,引きすぎたのであとから半径2cm,高さ4cmの円柱を加えることになります。
6×6×3.14×8−4×4×3.14×4+2×2×3.14×4
=(288−64+16)×3.14
=240×3.14
=753.6(cm3) …答え
ところが,パップス・ギュルダンの定理を利用すると,まったく違う解き方で求められるのです。
パップス・ギュルダンの定理
回転体の体積 = 回転させたい図形の面積 × 重心が動いた長さ
この問題では,回転させたい図形は右の斜線部分ですから,その面積は,
6×8−4×2=40(cm2) です。
また,重心は右の図のように図形のド真ん中ですから,直線アから3cmのところです。
よって,重心は右の図のように動き,その長さは,
3×2×3.14 で求められます。
パップス・ギュルダンの定理を利用すると,次のように求められます。
回転体の体積
=回転させたい図形の面積×重心が動いた長さ
=40×3×2×3.14
=240×3.14
=753.6(cm3) …答え
みごと,ふつうの解き方と同じ答えになりました。
少なくとも,答えが合っているかどうかの確かめには使えそうですね。
次の問題はどうでしょう。
問題2 (2006日大第一)
右の図で,四角形ABCDは1辺の長さが5cmのひし形,AE=3cm,ED=4cmです。四角形ABCDを直線@を軸として1回転させたときにできる立体について,次の問いに答えなさい。ただし,円周率は3.14とします。
(1) 立体の体積を求めなさい。
(2) 立体の表面積を求めなさい。
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パップス・ギュルダンの定理を使って,求めてみましょう。
パップス・ギュルダンの定理
回転体の体積 = 回転させたい図形の面積 × 重心が動いた長さ
(1) 回転させたい図形は,右の図の斜線部分です。
斜線部分はひし形ですが,平行四辺形だと考えれば,面積は底辺×高さで求められます。
底辺はABなので5cm,高さはDEなので4cmです。
よって斜線部分の面積は,5×4=20(cm2)です。
また,重心は右の図の対角線が交わった点Oです。
DEは4cmですから,Oは軸から2cmはなれています。
重心の動いた長さは,2×2×3.14 で求められます。
パップス・ギュルダンの定理によって,
回転体の体積
=回転させたい図形の面積×重心の動いた長さ
=20×2×2×3.14
=251.2(cm3)…答え
(2) 回転体の体積は,次のように考えましたね。
回転体の体積=回転させたい図形の面積×重心の動いた長さ
回転体の表面積は,次のように考えます。
表面積の考え方
回転させたい図形を,(とても細い)針金でできていると考える。
ちょっと太いのですが,右の図のようなイメージでとらえるのです。
すると,回転させたい図形の面積というのは,面積ではなく,回転させたい図形のまわりの長さだと考えることができます。
この図形は,1辺が5cmのひし形ですから,まわりの長さは,
5×4=20(cm)になります。
また,重心はやはり,点Oにありますから,重心の動いた長さは(1)と同じです。
重心の動いた長さは,2×2×3.14 で求められるのでしたね。
パップス・ギュルダンの定理によって,
回転体の表面積
=回転させたい図形のまわりの長さ×重心の動いた長さ
=20×2×2×3.14
=251.2(cm2)…答え
パップス・ギュルダンの定理を使えば,次の公式も一瞬でわかります。
円すいの側面積=母線×底面の半径×3.14
この公式を,パップス・ギュルダンの公式を使って導いてみましょう
右の図のように,軸アのまわりを母線が回転すると,円すいの側面ができ上がります。
母線の重心は,右の図の点をつけた部分で,軸からのきょりは 半径÷2 となります。
すると,重心の動いた長さは,
(半径÷2)×2×3.14
=半径×3.14 となります。
パップス・ギュルダンの定理によって,母線が回転してできた面の面積(円すいの側面積)は,
母線の長さ×重心の動いた長さ=母線の長さ×半径×3.14
となるのです。
円すい台の側面積
さらに,円すい台の側面積も,同じように求められることがわかります。
円すい台の側面積は,右図のような長さアの線が,軸のまわりを回転することによってできます。
線の真ん中から軸までの距離をイとすると,
円すい台の側面積=線の長さ×重心の動いた長さ=ア×イ×2×3.14
となります。
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